ヘンタイでいこう!

水中撮影を続けるうちに興味が小さい被写体、いわゆるマクロ撮影が多くなってきました。もともとデジカメはワイド写真よりもマクロ写真に強いと言われています。マクロ写真の被写体としてはウミウシとかハゼ、イザリウオなど数mm〜数cm程度の小さい生物がほとんどです。彼らは気も小さいので、被写体にあわせて海底や岩肌にへばりついて撮影しなければなりません。しかも1枚の最高の写真を手に入れる為には、息を殺して何分もその場でジッと耐える必要があります。

例えばハゼ類には、海底の砂地に巣穴を作るエビと共生する種類がいます。非常に臆病ですが、監視役のハゼは危険を察知するとすぐにエビに知らせて一緒に巣穴に引っ込んでしまうので簡単に近づくことはできません。まだ十分に距離がある内に1枚パチリ。ほふく前進して距離を縮めます。ハゼは警戒体制を表す背ビレを立ててこちらを伺っていることでしょうが、息を殺して敵じゃないフリをしなければなりません。別にとって食うつもりはありませんが、相手にすれば自分の何倍もの大きさの生き物がにじり寄ってくる訳ですから、それは恐怖に違いないでしょう。
待つこと数分、ようやく背ビレがしぼんで警戒態勢を解いてくれたら、ちょっと近づいてパチリと1枚。また背ビレが・・・(繰り返し)。
これを繰り返すこと十数分、どこまで近づくことができるか、それがマクロ撮影の醍醐味の一です。これを楽しいと思うかどうか、個人差はあると思いますが・・・。
このような状況で数十分。
ただひたすら明日に向かって撮るべし!
そのときの写真。体長10cm未満。
水温が低く寒かった!
水深20mの真っ暗な水底で、岩のように固まって数十分も体長10mmの生物を撮影しまくるという行為は、ダイビングを知らない人から見ると信じられないかもしれない。いや、同じダイバーの目から見ても異常に映るに違いない。しかし、それがたまらなく大好きな人種がいるのです。

このような水中撮影スタイルを好むダイバー達を例えたものに、次の一文があります。


ダイビングを陸上の散歩にたとえるなら、彼らマクロのダイバーたちは、散歩の途中、路面を這うアリを、あるいは木の葉を這う虫を、そこにとどまってじーっと一時間も見続ける、ということをしていたといえる。
それ以後私は、彼らのようなダイバーをフィッシュウォッチング派ともマクロ派とも呼ばず、ただ『ヘンタイ』と呼ぶようになったのだった。


- 太田耕輔著 「ダイバーはパラオの海をめざす」 p.68より抜粋-

私は親しみを込めてマクロ写真に没頭するダイバー達を「ヘンタイ」と呼びます。
おそらく自分も含まれると思いますが・・・。


さぁみなさん、一緒に ヘンタイで行こう!

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