ダイビングエッセイ
ドライスーツ購入記 [ 2004/05 ]

私はダイビングを始めて2年ぐらいまでドライスーツを頑なに拒んでいた。なぜならウエットスーツで潜るダイビングこそダイビングだ!ドライスーツなんか軟弱者め!と根拠の無い自信を持っていたからであり、冬の間はダイビング熱も冬眠するか、ウエットスーツでも潜れる南国へ行ったりしていた。
しかしながら伊豆などは四季を通して観察できる生物も違うし、なんといっても秋から冬にかけて透明度も上がり被写体の種類も増えてもっとも充実しいてるとされている。また、伊豆は年間を通してみるとウエットスーツよりもドライスーツの方が活躍する期間が長かったりする。
水中写真への熱が上がると同時に一年を通して伊豆に潜ってみたいと思う私は、ダイビングを始めて3年目にしてとうとうドライスーツを購入するという新天地に一歩踏み出すことにした。
ここでは私のドライスーツ購入にまつわる話を書いてみたいと思う。

伊豆の水温とコンディション
ドライスーツとは?
ドライスーツとは気密性の高いダイビング用のスーツである。気密性が高い・・・というか気密性が完璧でないと水没してしまうので、正しくは完璧な気密性を保つことができるスーツと言った方が良いだろう。手首や首周りの防水に間違いが無ければ、その名の通りこれを着ていれば水中でも体が濡れる事はない。スーツの下にはスウェットなど普段着ている物を着込んで潜ることになる。最初は水中にいるのに体が濡れない感覚が奇妙に思えたが、慣れてしまえばそんなに気になることもない。既にドライスーツ大好き派になってしまった私だが、あえて先にドライスーツのネガティブな面を考えてみると次のことが挙げられる。(新たなストレスの種)

(1)使用するウエイトが増える
ドライスーツでは中に空気や空気をたくさん含んだ服を着込んで潜る為、ウエイトを多く装着する必要がある。私の場合ウエットスーツで2kgぐらいだが、ドライスーツだと8kgが目安。陸上での動きが益々鈍くなる。

(2)浮力コントロールが面倒くさい
深場へ潜ると水圧でスーツの中の空気がスクイズで縮んで痛くなる為、スーツの中にエアを注入しなければならない。そしてこの注入したエアは浅場へ浮上する際に排出する必要があり、エアーを出したり入れたりが面倒くさい。BCのエアー調整みたいなもんだと思えばよいし、慣れればたいした問題ではない。

(3)水中でトイレができない
これは一番切実な問題かもしれない。ウエットスーツだと1ダイブで3回ぐらいトイレ(もちろん小)をするのだが、それができない。水中では無重力の為か寒さの為かわからないが、圧倒的にトイレが近くなるのだ。宇宙飛行士も無重力下ではトイレが近いに違いない。ドライスーツを着込む前に最後の一滴まで絞り出しておかないと、ダイビング後半は思考回路が尿意でいっぱいになることがある。寒さはある程度我慢できるが、トイレだけは我慢のしようがない。
もちろん水中でトイレしちゃっても良いけど、その後の惨状は見るに絶えないと思われる。。。


ドライスーツのネガティブな面といえばこのぐらいだろう。これを聞いてもうダメだと思った人はこれ以上読む必要はないし、ますます興味を持ってくれたならこの先も読んでください。


そもそも私はドライスーツは「欲しいなぁ」と思っていたけど、いつ頃買うのか全然予定を立てていなかった。自宅に届いた某器材量販店のダイレクトメール「12月決算キャンペーン」にまんまと乗せられて、気がついたら購入していた。我ながら行き当たりばったりである。
ドライスーツの価格はピンキリで、下は5万円ぐらいから上は30万円ぐらいまでの品揃えがある。30万円は極端だがやはり高い物は機能も高くデザインも良い。自分で作ってみて思ったのだが、ドライスーツをオーダーする上で大事なのは(1)採寸、(2)生地、(3)リストバルブの有無、ではないだろうか。

(1)採寸
自分の体型にフィットした物を作る為に必須である。レンタル品を使用した人は体形に合わないと結構水没しているという話を聞く。ここはパンツ一丁で採寸してぴったりの物を作ってもらおう。

(2)生地
スーツの内側の生地である。いわゆる安い生地は保温性が低い。寒さに対抗する為にインナーとして着る服が増えてしまうとその分浮力も増えてしまい、機動性が落ちてしまう。保温性の高い生地でスーツを作るメリットは大きい。また、ちょっと良い生地になるとスクイズでスーツが縮んでも痛みを緩和してくれる。

(3)リストバルブの有無
手首にスーツ内のエアを抜くバルブを付けるか否か、ということである。通常オプション扱いになっているので追加料金を払う必要があるが、これはあると便利である。特に水中写真をやっているのなら撮影しながらでも簡単にエアーを抜く事ができるのでオススメ。逆にフットバルブ(足首)は無くても良いらしい。私はフットバルブは最初から付けていないので比較することはできないが、暖まったエアが意図せず足首から洩れてしまうらしい。


以上を鑑みて、私はばっちり採寸し、ちょっと上等の生地を使い、リストバルブをオプションで装着して某量販店でトータルで10万程度のスーツをフルオーダーした。その外観はウエットスーツのデザインとそっくりで、個人的には気に入っている。2003年12月9日にオーダーして、年内の初ドライスーツ・ダイブに間に合ったのであった。
ライセンス団体によっては「ドライスーツ・スペシャリティ」というコースがあって、それを習得するとドライスーツが使えるようになる、というよくわからないコースがある。他にもボート・スペシャリティとかカメラ・スペシャリティとか習得するのに各数万円払わなければならないコースがあるのだが、私はそんなの一度も取ったことがないので、今回もそんなコースは習得しないことにした。

結論から言うと、私の初ドライスーツ・ダイビングは快適そのものだった。前述した新たなストレスの種さえ早い段階でクリアできれば、ウエットスーツでは潜れなかった海を満喫することができます。これはもう凄い発見。
また、水中は言うに及ばず陸上も極めて快適であると強く言いたい。1本目が終り、2本目に備えて陸上で休憩している間が快適なのは7月〜8月ぐらいであり、それ以外の期間は寒さに震えていることが多い。しかも体がようやく乾いた状態からまた半乾きの冷たいウエットスーツを着る瞬間が結構嫌いだ。ドライスーツはそれがない。エキジットしてスーツを脱げばすぐに普段着に戻れるので、海面休息時間が非常にラクなのだ。これは予想以上にダイビングを快適なものにしてくれます。それは間違いない。


以上のように、すっかりドライスーツ推奨派になってしまった私です。もしドライスーツの購入をためらっている人がいて、ダイビングを今後も続ける予定がある人ならば、これまもう迷わず買いである。今まで拒んできた自分がアホに思えることでしょう。きっと私のように「やっぱドライスーツは快適で良いよね〜〜」とコロっと意見を変えてしまう筈である。

ドライスーツだけに、レッツ・ドライ!
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